【コラム】台本読解力の前に、足りていないもの。
こんにちは。
S&S声優コースの佐山直子です。
ここ最近、複数の方から同じ質問を受けました。
「オーディションにおける初見の台本について、
滑舌を含めた読みチェック、状況の分析、
キャラクターのチョイス、演技プランなど、
やることはたくさんあると思うのですが、
もちろん全部できなくてはいけない前提で、
何を優先すればいいですか?」
とても真面目で、切実な質問だと思います。
本来の“考える順番”はある
理論的に考えるなら、
1.台本全体を読む
2.読み方(漢字・アクセント・滑舌)の確認
3.台詞に書かれている状況を理解する
4.その台詞を発している人物を捉える
5.キャラクター・芝居の方向性を決める
・・・この流れが自然?かもしれません。
でも、現場では一気にやっている
ただ、正直に言うと、
私自身がボイスサンプル指導などで
生徒さんの原稿を初見で見るとき、
この順番を明確に意識して
一つずつ処理しているかというと、
実際はかなり感覚的に、ほぼ一気にやっています。
おそらく、現場に長くいる人ほど
「分解せずに同時にやっている」感覚に近いと思います。
「優先順位」を考えてしまう理由
この質問が出てくるということは、
一気にすべてを処理できない、という状態なのだと思います。
それ自体は、決して悪いことではありません。
できないなら、段階的に身につけていけばいい。
ただ、ここで一つ気になることがあります。
「優先順位」という言葉が出てくる時点で、
・間に合わなかったものは仕方ない
・できなかった部分は捨ててもいい
という前提になっていないでしょうか。
やらなくていいことは、一つもない
もし、
「読み方や滑舌が最優先」
とだけ伝えてしまったらどうなるか。
芝居が後回しになったり、
台本を深く読み込まないまま
オーディションに臨んでしまう。
それでは本末転倒です。
芝居をしてほしい場で、芝居をしていない。
そんな状態になってしまいます。
結論:優先順位は存在しない
結論として、
優先順位なんてありません。
結局、全部できなければ意味がない。
それができていない状態は、
声優としての力がまだ足りていない、ということになります。
だから私は、
「台本の読み取りが当たり前にできるようにならないと」
と、ずっと発信しています。
ただしこれは、
一朝一夕で身につくものではありません。
相当なトレーニングが必要です。
では、今すぐ全部できない人はどうする?
「一気にすべては無理だ」と感じている人が、
では何からクリアしていけばいいのか。
そのことを考えていて、
ふと気づいたことがありました。
台本分析以前に、多くの人に足りないもの
それは──
◉作品をあまり知らない
◉作品をあまり見ていない
◉好きなものしか見ていない
◉見るジャンルが偏っている
ということです。
作品を見ている人ほど、想像の幅が広い
アニメ、外画、ゲームに限らず、
ドラマ、舞台、映画(邦画)など。
さらにジャンルを問わず
さまざまな作品に触れている人ほど、
同じ一言の台詞でも、
・いくつもの状況が思い浮かぶ
・複数のキャラクター像が浮かぶ
・違うアプローチを試せる
そう感じます。
「思いつかない」の正体
「なぜこんなに思いつかないんだろう」
そう感じたとき、
私はこう思いました。
あ、作品を知らないんだ。
想像力は“知っている量”に比例する
私自身、
膨大な量の作品を見てきたかと言われたら
そこまででもないかもしれません。
それでも、
一つの台詞に対して
複数のパターンが浮かびます。
一方で、
それができない人は、
・一つの設定に固執する
・決めつけた芝居になる
・別案を振られると対応できなくなる
そういった傾向が強いと感じます。
想像力を養う一番の近道
それは、
・たくさんの作品を見ること
・たくさんの世界観を知ること
・たくさんのキャラクターに触れること
です。
声優の仕事は、本当に幅が広い。
日常系や国民的アニメが好きでも、
アクション映画やホラー作品の吹替を
担当する可能性は十分にあります。
台詞一つで、選択肢がいくつ浮かぶか
生徒さんのボイスサンプルや
オーディション台詞など、
多くのジャンル、
多くの世界観、
多くのキャラクターに触れていると、
一つの台詞を見たときに、
・どんな状況か
・どんな背景か
・このキャラが言ったらどうなるか
という選択肢が自然と浮かびます。
私は、その中から
「一番しっくりくるもの」
「書き手が本当に表現したいこと」
を探し、掘り下げていきます。
想像は、ゼロからは生まれない
人は、
・知っていること
・経験したこと
・見たり聞いたりしたこと
からしか、想像できません。
だからこそ、
「たくさん作品を見ろ」
と言われるのだと思います。
プロは、作品の“外側”まで見ている
私はさらに、
・インタビュー記事
・制作裏話
・関連動画やラジオ
などもよくチェックします。
「そういうのはファンがやることだと思っていました」
と言っていた生徒さんもいました(^^;
ですが、そこから、
俳優さんや声優さん、また製作陣の方々が、
どれだけ役と、作品と向き合っているかが分かります。
「やっているつもり」が一番怖い
それを知らないまま、
・自分がどこまでできているか分からない
・でも、やっているつもりになっている
そんな人が本当に多い。
プロがそこまでやっているのに、
プロではない人が
そこまでの熱量を持たずに臨んでいたら──
厳しいですが、
なれないのは当然だと思ってしまいます。
まずは、先人から学ぶ
役の掘り下げ方が分からないなら、
無料で見られる記事や動画がたくさんあります。
先人のやり方を見て、学べばいい。
それをせずに
独自の方法だけで掘り下げようとすると、
どうしても浅くなってしまいます。
想像力・読解力が足りないと感じたら
・課題台詞で一つしか案が浮かばない
・想像が広がらない
・読解力が弱いと感じる
そんな人は、
まずジャンルを問わず、
さまざまな作品に触れてみてください。
ただし、誤解しないでほしいこと
たくさん作品を見たからといって、
・読解力が勝手に深まる
・演技が急に上手くなる
わけではありません。
ただ、
・世界観
・状況
・キャラクター
を知る範囲が広がる。
それが、
読解力や演技の幅を広げる大きな助けになります。
知っている量は、演技の土台になる
たくさん作品を知ってください。
たくさんキャラクターを知ってください。
たくさんの向き合い方を知ってください。
知っていることが増えるほど、
想像力や理解力は広がり、深まり、
必ず演技の助けになります。
まずは、実践してみてください(^▽^)!!
それでは次回の更新もお楽しみに!
(佐山)
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